オールドスタイルな自販機は、商品がマトリクスに配置されていて、そこの下のボタンを押すか、番号を押して商品を手に入れる。これって2次元の記憶の宮殿じゃんと気づいただけの話。
記憶の宮殿というのは記憶術で、記憶したいことを頭の中で思い浮かべた宮殿の特定の場所に置き、引き出すときはそこに行くというもの。
オールドスタイルな自販機は、ユーザーに記憶の宮殿を提供していた。多くの人は同じものを食べたり飲んだりするので、いつも使う飲料や食券の自販機で、自分が飲食したいものを場所で記憶していた……はず。これは自分の経験からの推測だけども。
タッチパネル式の自販機が増えて、逆説的にそれに気付かされた。ただ、ここにはディテールがあって、JR東日本のタッチパネル式自販機では記憶の宮殿の不在を意識させられなかったのに、松屋とやよい軒の券売機では意識させられてしまったという違いがある。
JR東日本のタッチパネル式自販機は、すべての商品が毎回全面に写真つきで出てくる。
画像は『JR東日本の駅構内にデジタルサイネージ型次世代自販機 - ケータイ Watch』から引用。もう登場して13年経つんですね、これ。
それに対して松屋とやよい軒では、最初の画面ですべての商品は出てこず、短いスパンで最初の画面に出てくる商品が入れ替わる。しかも、商品は同じデザインのボタン内に入れ込み、それがタイル状に並べてある形になっている。つまり、ユーザーに記憶の宮殿を作ってしまいつつ、その中身を勝手に入れ替えてしまっているのだ。
松屋の券売機のUIはこれまでも着々と悪化を進めてきたがここに来て「「極み」」に到達した感ある デザイナーいないんですか? pic.twitter.com/O4Ivhfvbhs
— enden (@enden_nix) April 25, 2023
解決策としてはすべての商品を画面内に収めきる、商品の2次元的位置を変えない、タイル状のデザインをやめる、流動的なUIにするなどがあると思うが、結構難しそうだなぁというのが正直なところで、極めて難しいUIを検討している定食屋券売機UIデザイナーの皆さんお疲れ様、である。