デザインスプリントをする時の考え方

インターン生向けにデザインスプリントのワークショップした時に、これは外したくない!って思ったワークと、これで身につけてもらえたらなと思ったスキルを書いておきます。学生向けにやった時に考えたことなのですが、UX設計をしたことのないお客さんを巻き込むときなんかも使うことで、仕事をしやすくしたりしました。

この記事ではオライリーから出ているデザインスプリントの本に準拠してます。

フェーズ別絶対にやって欲しいワーク

①理解フェーズ

  • 目標と目標でないこと
  • 事実と仮定
  • 課題の定義
  • ディスカバリーインタビュー
  • ユーザージャーニーマップ

②発散フェーズ

  • 8アップ
  • サイレント評価
  • ストーリーボード

③決定フェーズ

  • 1万円テスト
  • 異論の儀式
  • 仮説のおさらい

④プロトタイプフェーズ

  • 仮説のリストと検証ボード
  • 評価前の質問の作成
  • 評価後の質問

⑤テストフェーズ

  • 評価のインタビュー

身につけてほしいスキル

  • 簡単な絵を描く
  • ストーリーを作る
  • ワイヤーフレームを描く
  • 強制的にアイデアを出す
  • 時間を意識して会議する
  • ミーティングの中で同時に個人作業する
  • 合意した事項をまとめる
  • チームの賛否を可視化する
  • チームで合意する
  • 建設的な批判をする
  • 発散と収束のフェーズを意識的に選択する
  • ユーザーにインタビューする
  • 評価プランを作成する
  • ユーザーを観察する

どうして評価を重視するのか?

作る側とユーザーとのギャップを体感してもらいたいんですね。それをすると常に答えはユーザーが提供してくれることが実感できるはずなので。デザインスプリントの源流のひとつ、トヨタ生産方式は価値が生まれる瞬間から上流に逆算していくことがポイント。アジャイルやスクラム、カンバンもやはり機能の本番運用開始を基点に考えます。そこで生まれる価値の最大化と最速化のために各種テクニックがあるわけなので。

会議のコツ

miso-engine.hatenablog.com
過去にこんな記事書いたんですが、その後インターン生向けにちょっと仕事を教えた時にざっとノウハウをまとめたので共有します。もっと簡単に今すぐできる会議のTipsですね。

議事録の書き方について

  1. 新しい情報ほど上にくるほうが使いやすい
  2. メンバー毎に絵文字を設定すると誰の発言かわかりやすくなって便利
  3. 箇条書きのネストをうまく使ってディスカッションを整理していく
  4. 決定事項や重要事項に太字を使う
  5. 絵文字で進捗状況やアクションアイテムを示すと便利

会議自体のコツについて

  1. 全体を見て議題を把握する
  2. 議題の中の合意が簡単そうなものからやっていく
  3. 合意が簡単そうでも意見が別れたらすぐ次にうつる
  4. ひととおり終わったら合意が難しい議題にうつる
  5. 先送りが出来る議題か確認し、先送りできるものはする

会議の流れが停滞した時のコツ

①単純な疲れ
→休憩を入れる

②案が出ない
→個人によるアイデア出しの時間を明示的に取る

③選んだり判断するのに迷う
→投票してなぜそこに入れたかを聞く

全投影空間のコンテンツ設計Tips

miso-engine.hatenablog.com
先日こちらの記事で紹介したRICOH PRISM。部屋の壁4面と床すべてが投影による画面という空間でのコンテンツ設計は、通常の画面設計とは大きく異なっていました。ここでは覚書としてコツをまとめておきます。

VRアプリでのUI設計にも応用可能なことだと思います。

人の横の視野が特に重要

多くのUIデザインで考えなくて良いことに、横の視野の広さがあります。現行のデバイスの多くはユーザーがその画面全体を全て視野に収めている前提で作られているからです。投影空間では視野は大変重要です。横に実質無限の広さがあるので、人が楽に捉えられることが出来る範囲に収める必要があります。これは開発後半でも出てくる問題で、画面いっぱいに文字を出したら近づいてる時に読めない、ということが起きがちです。

場所を動かすアニメーションは視野と合わせて設計する

人が自然に視野を動かす以上のスピードのアニメーションは、認知が不可能になります。壁の模様が変化している、みたいに捉えられてしまいます。壁全面ということで、壁をぐるぐる回るようなアニメーションにしたところ、視野を大きく超えて身体の向きを変えて追っていく必要が出てしまい、狙った効果が得られないことがしばしば起きました。複数人で体験すると、他者への視線を配慮せねばならず、より注目されなくなります。

一方で視野や移動の誘導も含めて設計すると、面白い体験になり得るので、ここは全投影空間設計の最も楽しい点でもあります。

周辺から中央にアイテム表示を移動させていき、最後にみなの視線が中央に集まるようなアニメーション設計を考えていたと時のホワイトボード

床は見ていない

壁側にも投影があると、床はほとんど注目されません。視線は下には普通いきません。床を活用するならむしろ壁側の表現を抑制する必要があります。

離れた場所で同時に意味のある動きを作らない

4面あるので全ての面で同じ説明動画を流したら、ユーザーは他人に邪魔されずに近くの画面を見れて便利だろう、そう考えて実装したら破綻しました。視野の端に動く別動画が気になって何を見れば良いのか分からなくなるのです。解決策はシンプルで1面だけにしましょう。視野の端は実は進化の過程で中央よりも動きに反応しやすくなっているので注意が必要なのです。ゆっくりした動きなら大丈夫なのでスクリーンセイバー的な表現は問題ありません。

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この動画はPRISMアプリのひとつ、BRAIN WALLの開発中のもの。まさに同じ動きのものを4面に作ってしまった失敗事例です。

音が重要

映像に囲まれているからこそ音が重要になってきます。指示や操作の重さもしくはかるさをユーザーに伝えるには必須なのです。UIパーツを凝るよりもSEにお金をかけた方が体験としてのリッチさが簡単に上がるでしょう。音がぴったりハマると繰り返したくなる体験になります。

ポインティングデバイスを使うかどうか

直接のタッチとポインティングデバイスの使い分けは、最近のデバイスの悩みですが、全投影空間にもまたあります。ただ、ここは普通のデバイスでの使い分けと同じ感じになるので、ノウハウを流用できます。つまり、より細かいことをさせるならポインティングデバイス。大雑把にやるならタッチ。どちらもあることは、アプリごとのチュートリアル設計や体験開始時の設計をしっかりすれば問題ありません。

おわりに

全投影空間の設計は、現在使われている画面の中のUIとは大きく異なり、導線などを踏まえた建築的発想も必要とされ、未知なものと格闘させられる体験でした。ユーザーはどこに立つのか?はたまた座ってしまうのか?歩き回ってくれるのか?想定通りに動いてくれる?くれない?UI設計とは思えない問いが大量に出てきて、疲れると同時に楽しい状況でした。AppleがVision Proを発表し、ARが盛り上がってくる予感もあり、今後これらの経験が活かせる機会は増えていきそうで楽しみです。